歯周病は人から人へうつる!?原因と予防方法について

「歯ぐきが赤く腫れてきた・・・」

「歯磨きのときに歯ぐきから血が出る・・・」

「歯がぐらぐらしてきた・・・」

歯の周辺組織である歯ぐきやあごの骨に異常が起きる歯周病は、お口の中にひそんでいる歯周病菌という細菌によってひきおこされます。
気がつけば歯が自然と抜け落ちることもある怖い歯周病ですが、その歯周病をおこす歯周病菌が「人から人へとうつる」ということをみなさまはご存知でしょうか?
歯周病菌は虫歯と同様に唾液を介して人にうつる可能性がある細菌のひとつであり、現在では特に親子間感染である母子感染に対して注意をうながす声が上がってきています。
ただし、歯周病は単に人から感染して発症する病気ではなく、日ごろのお口のケア不足が歯周病に発展する、というメカニズムを持っており、歯周病を予防するためには毎日のブラッシングが重要となります。
今回は、「人から人へうつる!?歯周病の原因と予防方法」についてお話をさせていただきます。

■歯周病は「キス」でうつる?

◎キスや食べ物の分け与えが原因で歯周病を発症することはありません

唾液を介してうつることが明らかになっている歯周病菌。
では、唾液を介する行為であるキスや、親子間で食べ物を分け合う行為で歯周病が人から人へ感染することがあるのでしょうか。
これについては、結論から言いますと「キスや食べ物の分け与えで歯周病自体が感染することはない」と言えます。
その理由は、キスなどの唾液を介する行為では「歯周病菌」という細菌が人から人へうつる可能性はあるものの、「歯周病そのものがキスや食べ物の分け与えによって人から人へうつることはない」からです。

◎じゃあ、唾液を介して歯周病菌がうつったらどうなるの?

歯周病そのものはキスや食べ物の分け与え・回し飲みなどが原因でうつることはありません。
しかし、キスによって唾液を介し、人から人へ歯周病菌が感染することはあります。
そして、キスで感染した歯周病菌がお口の中で歯ぐきやあごの骨にダメージを与える可能性はゼロではありません。
「ゼロではない」と比較的弱い表現をしたのは、キスでお口の中に感染した歯周病菌は、そもそも誰のお口の中にでもいる細菌であるためです。
歯周病は、お口の中にいるおよそ500種類以上の細菌の中でも特に歯周病にかかわっている6~7種類の歯周病菌によって発症します。
このため、キスなどの唾液を介する行為によって外部から感染した歯周病菌が歯周病をひきおこす確率よりも、「もともと誰のお口の中にも存在している歯周病菌が、歯磨き不足などの生活習慣の乱れによって繁殖して歯周病をひきおこす」確率の方がずっと高いのです。

■歯周病になるメカニズム

◎細菌や毒素から身体を守る炎症反応が過剰になると・・・

私たち人間は、細菌が身体の中に侵入したり毒素が発生すると、それらの異物から身体を守るために「防御反応」をおこします。
防御反応は別名を「炎症反応」と呼び、炎症反応によって体内に入り込んだ細菌や発生した毒素が広がるのを防いでいます。
しかし、炎症反応が過剰になってしまうと、身体の組織が炎症反応によって破壊されたり痛みが悪化することがあります。

◎歯周病をひきおこす原因は歯に付着した「プラーク」

歯周病は、上記の炎症反応が歯の周辺組織である歯ぐきに現れることで発症します。
歯周病菌は普段、歯に付いたプラーク(歯垢)の中にひそんでおり、歯磨き不足によって細菌の数が増えて繁殖してゆきます。
そして、お口の中で増えてしまった歯周病菌が歯と歯ぐきのあいだの溝にあたる「歯周ポケット」と呼ばれる部分に入り込むと、歯周病菌という身体にとっての異物を排除するために歯ぐきが炎症反応をおこします。
この歯ぐきの炎症反応が、初期の歯周病である「歯肉炎」の始まりです。

■初期段階の歯周病は「セルフケア」で改善することができます

歯周病は初期の歯肉炎の段階であれば、患者様がご自身で行う毎日のブラッシングを中心としたセルフケアで症状を改善することができます。

1-1.歯肉炎の症状を改善するセルフケア「3つの基本」

セルフケアで歯肉炎の症状を改善するためには、以下の「3つの基本」をおさえながら正しい方法でブラッシングを行うことが重要です。

①歯ブラシはやわらかめのものを使用する

歯肉炎の症状がでているときに、歯ぐきの血流を促進する目的でブラッシングを行う際には、かためやふつうの歯ブラシでは歯ぐきを傷つけてしまい、出血がさらにひどくなってしまうおそれがあります。
このため、ブラッシングをする場合は、「やわらかめ」の歯ブラシを使って歯ぐきのマッサージを行うようにしましょう。

②ブラッシングは軽い力で行う

歯周病になると歯ぐきが腫れたり出血するほか、歯ぐきから膿が出たり歯ぐきが下がるなどの症状が現れます。
ブラッシングを強い力で行ってしまうと、歯や歯ぐきを傷めてしまうおそれがあるほか、歯ぐきを後退させる原因にもなってしまいますので、ブラッシングは必ず「軽い力」でやさしく行うことを心がけましょう。
力加減の目安としては、「ペンを持つときのように」歯ブラシを軽く持つのがオススメです。

③歯と歯ぐきの境目の「歯周ポケット」をしっかり磨く

歯と歯ぐきの境目にあたる歯周ポケットと呼ばれる溝の部分には汚れがたまりやすく、歯周ポケットに歯周病菌が入り込むことによって症状が悪化します。
このため、ブラッシングの際には歯周ポケットに対して歯ブラシを「45度の角度」であて、溝の中のプラークや汚れをしっかりとかきだしておくことが重要です。
また、ブラッシングの際には歯と歯のあいだの汚れを落とすデンタルフロスや歯間ブラシを使うとより効果的にプラークを落とすことができますので、歯ブラシと合わせて利用するようにしましょう。

■歯科医院で行っている歯周病ケアについて

2-1.スケーリング(歯石取り)

歯石はそのもの自体は死滅した細菌のかたまりのため害はありません。
しかし、歯石が歯にできてしまうと歯石と歯のあいだに歯周病菌がひそみやすくなるため、自分では取ることがむずかしい歯石は歯科医院で行うスケーリングによって除去する必要があります。

2-2.歯周ポケットの清掃(クリーニング)

歯周ポケットに溜まったプラークや汚れは、自分で行う毎日の歯磨きでは十分に取り除くことができないため、歯石取りと同様に歯周ポケットの汚れも歯科医院で行うクリーニングで綺麗に清掃しておく必要があります。

【毎日のセルフケアと定期検診で歯周病の症状を改善】

キスや食べ物の分け与えなど、唾液を介する行為で感染することもある歯周病菌ですが、歯周病は感染に注意するよりも毎日のブラッシングを中心としたセルフケアを行うことが大切です。
また、歯周病は歯科医院で受ける定期検診によって早期発見・早期治療が可能となり、症状を改善しやすくなります。
私たち人間にそなわっている天然の歯や歯ぐきは、かけがえのない器官のひとつです。
大切な歯を歯周病によって失ってしまわないためにも、日ごろからセルフケアを欠かさずに行い、合わせて歯科医院での定期検診を積極的に受け、歯や歯ぐきの健康を保つことを心がけるようにしましょう。

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