大人の虫歯と子どもの虫歯!それぞれの特徴や注意点

虫歯はミュータンス菌によってひきおこされる、という点は大人も子どもも同じです。

しかし、大人と子どもの虫歯はそれぞれの年代によって症状が異なり、また、虫歯ができる箇所や程度も違ってきます。
子どもの乳歯は歯そのものが未成熟のため虫歯が進行するスピードが速く、大人の虫歯は進行する速度は乳歯と比べると遅いものの、エナメル質が厚いため虫歯の症状に気づきにくい、という特徴があります。

今回は「大人と子どもの虫歯の違い」および「それぞれの年代別の虫歯の特徴と注意点」について詳しくお話をさせていただきます。

乳歯・永久歯が生える時期

乳歯が生える時期とその役割

子どもの乳歯は生後6~7ヵ月ごろに生え始め、3歳ごろまでにはすべての乳歯が生えそろいます。
乳歯は単にものをかむ、という機能だけではなく、永久歯が生えるスペースの確保や歯を使ってかむことによりあごの骨や咀嚼筋の成長と発育にも大きな役割を果たしています。

永久歯が生える時期とその役割

永久歯は6歳ごろから生え始め、12~13歳前後ですべての永久歯が生えそろいます。
ただし永久歯は生え始めの時期と生えそろう時期にそれぞれ個人差があるため、一概にこの年齢で生えてくる、と言うことはできません。
また、奥歯の一番後ろにある親知らずは10代後半から20代前半の時期に生えてきますが、親知らずは歯ぐきの中に埋まったまま生えてきたり人によっては親知らずそのものが生えないこともあります。(親知らずの先天性欠損)

乳歯の虫歯の特徴と注意点

1.乳歯の虫歯は白や茶色が多い


虫歯は黒い色をしているもの、というイメージを持つ人が多いのですが、歯が未成熟な乳歯の虫歯は白や茶色い色の状態のまま進行しやすい、という特徴があります。
子どもの歯が部分的に白色または茶色になっていたらすぐに歯科医院で診察を受けさせるようにしましょう。

 

2.乳歯の虫歯は進行スピードが速い


乳歯の虫歯は白い色や茶色のままで進行することが多く、悪化するスピードも速いので注意が必要です。
乳歯は未成熟でエナメル質が薄く、虫歯ができるとエナメル質の下にある象牙質にまで一気に症状が進んでしまうこともあります。

 

3.子どもは虫歯の痛みに気づきにくい


大人の場合は虫歯ができると歯に違和感を感じることが多いのですが、子どもは痛覚が発達しておらず、虫歯ができても痛みに気づきにくいです。
また、虫歯は痛みがでたり引いたりする性質があるため、子どもが虫歯の痛みを訴えたあとに「もう痛くない」と言うケースも多いのですが、このときに子どもの虫歯を見過ごしてしまうとどんどん虫歯が悪化してしまいます。
子どもが少しでも歯が痛いと訴えるようであればできるだけ早めに歯科医院に連れていき、診察を受けさせるようにしましょう。

 

乳歯の虫歯が発生しやすい場所

  1. 上あごの前歯のあいだ

    子どもの乳歯の虫歯でまず気をつけておきたい場所は「上あごの前歯と前歯のあいだ」です。
    上あごの前歯は哺乳瓶からミルクやジュースなどの飲み物を飲むときやコップでジュースを飲むときにまず最初に液体に触れるため、虫歯にかかりやすくなります。
    ミルクやジュースを子どもに与えるときにはだらだらと長い時間飲ませ続けるのではなく、決まった時間に与えるようにしましょう。

  2. 乳歯と歯ぐきの境目

    大人の歯もそうなのですが、子どもの乳歯と歯ぐきの境目の部分は磨き残しが発生しやすく、虫歯にかかりやすくなります。
    特に子どもの場合、歯の上部は磨くものの歯と歯ぐきとの境目の箇所までしっかり磨けているケースは少ないので、保護者の方が子どもの磨き残しを常にチェックし、仕上げ磨きをしてあげるようにしましょう。

  3. 奥歯のかみ合わせ面の溝

    大人や子どもに限らず、奥歯のかみ合わせ面の溝はプラークや食べカスがたまりやすく、虫歯にかかりやすい場所のひとつです。
    特に一番奥の歯とその手前の奥歯は歯ブラシが届きにくく磨きにくいため、保護者の方が仕上げ磨きをしてあげてください。

  4. 奥歯と奥歯のあいだ

    大人、子どもともに歯と歯のあいだの隣接した面は虫歯にかかりやすい場所のひとつです。
    特に奥歯と奥歯のあいだは歯ブラシが届きにくいため虫歯を発症しやすくなります。
    子どもの年齢が小学校3年生くらいになったら、自分でデンタルフロスを使うようにさせましょう。
    なお、6、7歳以下の子どもの場合はデンタルフロスを上手に使えない場合が多いので、保護者の方が子どもの歯磨きのときにデンタルフロスをかけてあげるようにしましょう。
    デンタルフロスをかける際に子どもの口が小さくてかけづらい場合には、持ち手がついたベビー用のフロスピックを活用すると歯と歯のあいだの汚れを効率的に取り除くことができます。

仕上げ磨きは優しくていねいに

自分でしっかりと歯磨きができない子どもには保護者の方が仕上げ磨きをしてあげることで磨き残しがでにくくなり、虫歯を予防できる確率が高まります。
ただし、仕上げ磨きをする際には「面倒くさいから」「わずらわしいから」という理由でゴシゴシと強い力で磨いてしまうと子どもの歯や歯ぐきを傷つけてしまうおそれがあるほか、仕上げ磨きという行為自体を子どもが嫌がってしまいます。
仕上げ磨きをするときにはできるだけ優しくていねいに磨いてあげるようにしてください。

大人の虫歯の特徴と注意点

1.大人の虫歯はゆっくり進行する


永久歯はエナメル質がしっかりと形成され厚みがあるため、歯が未成熟で進行スピードが速い乳歯の虫歯と比べた場合、比較的ゆっくりと症状が進んでいきます。
もちろん、大人の虫歯もエナメル質の下にある象牙質や歯の神経がある歯髄(しずい)部分にまで到達すればしみや痛みを感じるようになるのですが、虫歯の進行速度が遅いため「何だか痛いけど、大丈夫かな」と自己判断してしまい、虫歯の症状が進んでしまうケースが少なくありません。

青年期(13~34歳ごろまで)の虫歯の特徴

中高生時代は「スポーツドリンク」の飲みすぎに注意


小学校の学童期を経て中高生になる青年期初期には、部活動のあとなどにスポーツドリンクを飲む子どもが多いのですが、スポーツドリンクは多いもので350ml(ジュースの缶1本)あたり「約15~20g前後の砂糖」が含まれているため、飲みすぎには注意が必要です。
特にスポーツドリンクは運動部の部活をしている子どもの場合、毎日練習中や練習後にガブガブと飲む、というケースが多いのですが、虫歯予防の観点からはあまりおすすめできる飲料ではありません。
もし、運動の最中にのどが渇くようであれば水や無糖のお茶など糖分を含まない飲料を飲むようにしましょう。
なお、部活動に限らず糖分をたっぷり含んだお菓子や清涼飲料水は虫歯を発症するリスクを高めてしまいますので、できるだけ控えるようにしてください。

受験や資格試験の際の夜食にも注意が必要


中高生時代の青年期初期には中学受験や高校受験、大学受験、または社会人となったあとには資格試験など、テストに合格するためにがんばって勉強をされる方も多いかと思います。
受験中には夜遅くまで勉強をする場合、夜食を摂る方も多いのですが、夜食として食べるメニューがお菓子や甘いココア、砂糖の入ったコーヒー・紅茶、ジュースなどの甘い飲み物や食べ物ばかりだと虫歯にかかるリスクが高くなります
夜食を摂る際にはできるだけ甘いものは控え、飲食のあとには必ず歯磨きを行うことが大切です。
もし「時間がない」という場合は最低でもお口の中だけはゆすいでおくようにしましょう。

大人の虫歯が発生しやすい場所

  1. 詰め物やかぶせ物の下(二次カリエス)

    大人の永久歯と子どもの乳歯の虫歯の違いとして一番大きいものは、大人は一度治療をして詰め物やかぶせ物をした歯がふたたび虫歯になる「二次カリエス」が発生しやすい、という点です。
    特に保険を適用できる銀歯(金銀パラジウム合金)の詰め物やかぶせ物は歯との密着性が悪く、セメントが劣化して二次カリエスになる確率が高いです。
    二次カリエスを防ぐには、歯との密着性が高く金属アレルギーをおこしにくいセラミック素材を選択するか、もしくは柔軟さがあり歯にフィットするゴールドインレー・クラウンを使った治療をお受けになることをおすすめします。

  2. 親知らず

    親知らずは奥歯のさらに後ろ、あごの一番奥に生えてくる歯で、ほとんどの場合、10代後半から20代前半ごろにかけて上下左右の4本の親知らずが生え終わります(※)。
    (※ 人によっては親知らずが生えてこないこともあります(親知らずの先天性欠損))
    あごの一番奥にある親知らずは斜めに生えてきたり一部分だけがでてくるなど、不規則に生えることも多いため歯磨きがしにくく、どうしても虫歯にかかりやすくなります。
    親知らずの虫歯を治療するかどうかは歯科医院ごとの方針によって異なりますが、「まっすぐ綺麗に生えている親知らずは治療をしてできる限り歯を残す努力する」というクリニックもあれば、「親知らずは磨きにくく治療をしてもふたたび虫歯になるケースが多いので抜いてしまう」、というところもあります。
    いずれにしろ、親知らずは磨きにくい場所に生えてくる歯のため、歯磨きの際にはヘッドがコンパクトで奥まで届きやすい歯ブラシを使用するか、毛束が尖ってペンのようになっているワンタフトブラシを活用するなど、日ごろからご自身で工夫をしてプラークや汚れを除去しておく必要があります。

  3. 歯の根面(中年~壮年、老年期に多い虫歯)

    年齢が30代後半以上、中年期から壮年、老年期になると加齢とともにお口の中の細菌バランスが崩れ、歯周病にかかる人が多くなります。
    歯周病によって歯ぐきが後退すると歯の根面部分が見えるようになり、露出した根面に虫歯ができやすくなります。(根元虫歯、根面う蝕)歯の根はエナメル質におおわれておらずむき出しの象牙質のため、一度歯の根面が虫歯にかかると非常に早いスピードで虫歯が進行しますので注意が必要です。

  4. 根尖病巣(歯の根っこの病気)

    根尖病巣(こんせんびょうそう)とは、歯の根っこの先に膿がたまり、痛みがでる病気です。
    根尖病巣は虫歯を放置して歯の根管内部が細菌におかされることで発症するほか、根管治療時に根管内部に細菌が混入してしまうミスによってひきおこされるケースもあります。
    子どもと違い、大人は虫歯ができても「忙しいから」「歯医者が苦手だから」といった理由で痛みを我慢してしまう方が意外と多く、歯の根っこが細菌におかされるまで虫歯を放置した結果、根尖病巣を発症するケースが少なくありません。

  5. 入れ歯の金具をかける部分、ブリッジと歯の境目の部分

    大人に多い虫歯としては、特に壮年期以降の方に頻繁に見られるのが部分入れ歯をひっかけている箇所の虫歯です。
    部分入れ歯は残っている歯に金具をかけて使用するためどうしても金具の周辺に汚れがたまりやすく、虫歯になるリスクが上がってしまいます。
    部分入れ歯は毎日必ず取り外し、入れ歯を装着していない状態でしっかり歯を磨くようにしてください。
    また、ブリッジを入れた歯は支柱になる歯とかぶせ物の境目に汚れがたまりやすく自分ではその部分を清掃しにくいため、虫歯を発症しやすくなります。
    ブリッジ治療を受けたあとには歯科医院で歯のクリーニングを定期的に受けるようにしましょう

  6. 奥歯のかみ合わせ面の溝、歯と歯のあいだ、歯と歯ぐきの境目

    大人、子どもに限らず、どの年代でも「奥歯のかみ合わせの溝」や「歯と歯のあいだ」、そして「歯と歯ぐきの境目(外から見える歯の付け根部分)」は磨きにくいため、虫歯にかかりやすくなります。
    子どもの場合は保護者の方がこれらの部分を仕上げ磨きしてあげることで虫歯を効果的に防げるようになりますが、大人の場合はご自身で上記の箇所に特に注意して意識しながら歯を磨くようにしましょう。

虫歯は早期発見・早期治療が重要です

「大人と子どもの虫歯の違い」および「それぞれの年代別の虫歯の特徴と注意点」についてお話をさせていただきました。

虫歯予防は毎日の歯磨きを中心としたセルフケアが基本となります。
しかし、子どもはきちんと歯を磨くことがなかなかできないほか、大人も歯磨きをついついさぼってしまうケースが多く、気がついたら虫歯にかかってしまい歯がしみを感じる・歯が痛むようになった、というご経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。

虫歯は早期に発見・治療すればするほど治療時の痛みや治療にかかる費用が少なくて済みます。
特に子どもの場合、「乳歯でどうせ生え変わるから」と保護者の方がお子さんを歯科医院に連れて行くのを止めてしまうことがありますが、子どもの乳歯の虫歯はそのまま放置しているとあごの骨の発育や永久歯の歯並びにも影響してきます。

もし、子どもが虫歯の痛みを訴えている場合にはできるだけ早く歯科医院を訪れ、診察を受けさせるようにしましょう。
現在は虫歯治療も技術が進化しており、以前の昭和の時代のような「無理やり押さえつけて治療をする」「子どもをしかる」といったことはありませんので、安心してお子様をお連れください。

また、大人の方も子どもの場合と同様、歯に違和感がある・歯が痛む場合には早めに歯科医院で診察を受けるようにしましょう。

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