現在、テレビコマーシャルやインターネットなどで頻繁に見かける、歯磨き粉の広告。
ドラッグストアに行けば、たくさんの歯磨き粉が店頭に並んでいますよね。
「○○味」や「塩を配合」、「歯がきれいになる」など、歯磨き粉にはそれぞれに「宣伝文句」が書かれていますが、はたして、その歯磨き粉は本当に歯の健康にとって効果的なのか、という点については疑問が残る製品も少なくありません。
その理由は、市販されている歯磨き粉の中には、単に発泡剤に人工甘味料などで味付けをしただけの製品が多く、ブラッシングの際に歯磨き粉をつけてもつけなくてもあまり変わらない、といった製品が多いためです。
歯磨き粉は、あくまでも虫歯や歯周病の予防のため、または歯を白くする審美目的のため、といったように「歯磨き粉を使う目的に対して、どれだけ効果的か」ということに注目して製品を選ぶ必要があります。
そこで今回は、数ある歯磨き粉の中でいったいどれを選べば良いのかが分かる「歯磨き粉を選ぶときのポイント」をご紹介します。
目次
■歯磨き粉はいる?いらない?
歯磨き粉を選ぶ際のポイントについてお話をする前に、そもそも「歯磨き粉って、必要なの?」という点についてふれてみたいと思います。
昔から、歯磨き粉には「つけない方がきちんと磨ける」「化学成分が入っている歯磨き粉はつけない方がいい」など、歯磨き粉を使わない方がいい、といったことをよく耳にしますよね。
これは、半分「YES」で半分「NO」です。
歯磨き粉は、「歯を磨いて、歯の表面に付いているプラーク(歯垢)を落とす」という目的に限って言えば、たしかに歯磨き粉はつけてもつけなくてもかまいません。
むしろ、歯を綺麗にするときには歯磨き粉はつけない方が磨き残しをよく確認できるので、歯磨き粉をつけないで磨くのも良い方法の一つです。
しかし、歯周病予防や歯周病の症状を軽減させる、または虫歯を防ぐ、歯を白くする、といった目的で歯磨きをする際には、それぞれの症状や目的に合った成分が配合されている歯磨き粉を使うことによりお口の健康を保ちやすくなる、というメリットがあります。
このため、「国民の8割が歯周病にかかっている」そして「国民の9割が虫歯がある・虫歯になったことがある」という現在の日本人の状況をかんがみれば、やはり「ブラッシングの際には歯磨き粉を使った方が良い」ということになります。
■歯磨き粉を選ぶときに気をつけたいポイント
◎まずは、自分自身のお口の状態を把握しましょう
歯磨き粉を選ぶときには、まず、自分自身のお口の状態を把握することが大切です。
ご自分のお口の状態をきちんと把握しておくことで、自分にはどんな歯磨き粉が合っているのかを見極めやすくなります。
◎年齢や症状によっても歯磨き粉の選び方は変わります
たとえば、それまで虫歯予防を主な目的としてフッ素が配合された歯磨き粉を使っていた人でも、高齢になってインプラントや義歯を使うようになればそれらの用途に合った歯磨き粉に変える必要がありますし、歯周病にかかってしまったときには歯周病の症状を改善する効果のある歯磨き粉を選択するのがベターと言えます。
このように、歯磨き粉は同じ人でも年齢や症状によって選び方が異なる、ということを認識しておくとよいでしょう。
■症状・目的別のオススメの歯磨き粉について
1-1.虫歯予防に効果的な歯磨き粉
虫歯予防を目的として歯磨き粉を選ぶ際には、「フッ素」が配合された歯磨き粉を選択することをおすすめします。
フッ素は、食べ物や虫歯菌が出す酸によって溶けてしまった歯のエナメル質を修復する「再石灰化」という機能を促進する作用のほか、歯の質を強化して虫歯にかかりにくくなる効果を期待できます。
2-1.歯肉炎(軽度の歯周病)に効果的な歯磨き粉
歯ぐきが赤く腫れたり出血する歯肉炎の症状がある場合には、
・歯ぐきの炎症をおさえる成分
・歯周病菌を殺菌する成分
・歯ぐきを健康な状態に戻す成分
上記3つの成分が配合された歯磨き粉を選ぶことをおすすめします。
具体的には、炎症を引き起こすキニンという物質が生成されるのを抑制してくれる「イプシロンアミノカプロン酸」や、歯周病菌を殺菌する効果のある「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」、血流を促進させる作用がある「酢酸トコフェロール(ビタミンE)」などが配合されている歯磨き粉をブラッシングの際に使うことにより、歯肉炎の症状をやわらげる効果を期待できます。
2-2.歯周炎(中度以上の重い症状の歯周病)に効果的な歯磨き粉
歯周病の症状が進んで歯ぐきが下がってしまったり、歯がグラグラする歯周炎になってしまったときには、これ以上歯ぐきや歯を傷つけないために「研磨剤を含んでいない歯磨き粉」を選ぶことと、「下がってしまった歯ぐきを活性化する成分」を含んでいる歯磨き粉を選ぶことが重要です。
具体的には、歯ぐきを活性化させる作用がある「塩化ナトリウム」が配合され、かつ、研磨剤を含まない歯磨き粉を使うことにより、歯ぐきが下がる症状をおさえる効果を期待できます。
3.歯の黄ばみや汚れを落とすのに効果的な歯磨き粉
歯が黄ばんだり茶色く汚れるのは、タバコに含まれるヤニや、コーヒーや紅茶、お茶、ワインなどの飲み物やカレー、キムチなどの食べ物に含まれている「ステイン(着色性物質)」が原因です。
このため、歯の汚れを落として綺麗にしたいときには、歯に付いた着色汚れを落とす作用のある「ピロリン酸」という成分を含んだ歯磨き粉を使うことをおすすめします。
なお、現在「歯を白くする歯磨き粉」として研磨剤が大量に含まれた歯磨き粉も販売されていますが、研磨剤入りの歯磨き粉は歯の表面が削られてしまい、むしろ汚れが付きやすくなりますので、使用しない方がよいでしょう。
4.歯がしみる「知覚過敏」に効果的な歯磨き粉
冷たい食べ物や飲み物で歯がしみる知覚過敏は、「強すぎる力で行う歯磨き」や「虫歯」、「酸性の食品」などが原因で歯の表面のエナメル質が薄くなってしまうことや、「歯周病」や「歯ぐきを強い力で磨く歯磨き」によって歯ぐきが下がって歯の根面部分が露出し、神経がむき出しになってしまうことが原因で外部からの刺激を感じやすくなる症状です。
知覚過敏の症状を感じにくくする歯磨き粉としては、「硝酸カリウム」が配合されている歯磨き粉がおすすめです。
硝酸カリウムにはむきだしになってしまった神経を少しずつ麻痺させてくれる作用があるため、「キーン」と歯がしみる知覚過敏の症状を緩和する効果を期待できます。
5.インプラントに効果的な歯磨き粉
インプラントはチタンでできているものがほとんどであり、歯磨き粉に含まれるフッ素はチタンを腐食させることが研究結果により明らかになっています。
上記の理由から、インプラントをお使いの方はフッ素を含まない歯磨き粉を選ぶようにしましょう。
また、インプラントは人工歯となる上部構造が陶器でできているセラミックや人工ダイヤモンドのジルコニアなど、さまざまな素材から作られており、歯磨き粉に含まれる化学成分によってはこれらの素材を傷めてしまうおそれがあります。
このため、インプラントがお口の中にある場合には「化学成分をいっさい含まない自然由来のオーガニック(有機成分)100%の歯磨き粉」を使用することをおすすめします。
【ご自分の症状に合った歯磨き粉を選びましょう】
「歯磨き粉選びのポイント」についてご紹介しました。
今では、数え切れないほどのたくさんの歯磨き粉が世の中にあふれていますが、大切なのはテレビコマーシャルやネットの宣伝に惑わされず、正しい情報と知識を得て自分自身の症状や目的に合った歯磨き粉を使う、この一点に尽きます。
ご自分のお口の状態に合った歯磨き粉を使って毎日欠かさずにブラッシングを行い、歯と歯ぐき、インプラント等の義歯をできるだけ長く健康な状態で保つことを心がけるようにしましょう。