虫歯を放置するのはハイリスク!虫歯が悪化する流れと重症化予防法

「歯医者に行くのが嫌」

「歯科医院特有の歯をけずる音や匂いが苦手」

「時間がなくて忙しいから」

 

歯科医院が嫌い、行きたくない、時間がない、などの理由で虫歯ができても放置してしまっている方は少なくないのですが、

 

虫歯は放置しても自然治癒することはありません。

 

むしろ、放置した虫歯はどんどん症状が進行し、冷たいものや甘いものが歯にしみたり、夜も眠れないほどの強い痛みを感じるようになるほか、最悪のケースでは虫歯が原因で心筋梗塞などの命にかかわる病気がひきおこされることもあります。
今回は、虫歯は放置するとどのように悪化するのか、そして虫歯の重症化を防ぐにはどうしたらよいのかについてお話をさせていただきます。

虫歯が悪化する流れについて

虫歯は進行度合いによって発生する症状と治療方法がそれぞれ異なってきます。
虫歯はC0、C1、C2、C3、C4と5つの進行段階に分けられ、C0がいちばん軽い初期の虫歯でC4がもっとも重い症状の虫歯となり、数字が大きくなるにつれて症状が重くなってゆきます。
このC0、C1といった進行段階を虫歯のステージと呼びます。
ここでは、ステージごとに異なる虫歯の症状の違い、そして各ステージに対応した治療方法の違いについてご説明いたします。

『C0』削る必要がないごく初期の虫歯(歯の表面が溶かされている)

 

[症状]

自覚症状なし

 

C0の虫歯は、歯の表面物質であるエナメル質が「脱灰(だっかい:エナメル質が食べ物や虫歯菌からでる酸によって溶けてしまうこと)」を起こし、溶け始めた状態です。
C0の段階の虫歯はごく初期の虫歯であり、痛みはありません。通常、健康な歯のエナメル質は表面に透明感がありますが、C0の虫歯にかかると歯が酸によって溶かされて脱灰が起き、その部分だけが白っぽくなる、という現象が発生します。


 

[治療方法]

 

C0の虫歯では基本的に歯を削る治療は行いません。
フッ素塗布などの薬剤を使った処置を行い、様子を見ます。
状態を見て虫歯が悪化するようであれば、ステージに合わせて虫歯の部分の歯を削る治療を開始します。
C0の虫歯は、以前は虫歯ということで歯科医院では削る治療を行っていましたが、現在では毎日の適切なブラッシングや歯科医院で行うフッ素塗布などでC0の虫歯の進行をふせぐことが可能になったため、C0の段階の虫歯で歯を削る治療を行うことはありません。

『C1』歯の表面に穴が開く虫歯(エナメル質が虫歯菌によっておかされる)

 

[症状]

 

甘いものがしみる

 

C1の虫歯はC0と同様に初期の虫歯に分類されます。
C1とC0の違いは、C0の虫歯がエナメル質が溶け始めているだけで穴は開いていないのに対し、C1の虫歯ではエナメル質に穴が開いた状態となります。C1の虫歯はエナメル質に穴が開いてはいるものの、まだ歯の神経である歯髄(しずい)に虫歯が達していないため痛みを感じることはありませんが、浸透圧の関係で甘いものを食べたり飲んだりしたときに歯がしみることがあります。


 

[治療方法]

 

歯を削り虫歯をとりのぞく治療を行います。
ただし、C1の虫歯はまだ初期段階の虫歯で歯髄まで達していないため、麻酔を使わなくても治療中に痛みを感じることはなく、治療はごく簡単な手順で済みます。
具体的な手順としては、麻酔を使わずに虫歯の部分を削ったあと、レジンというプラスチック樹脂でできた素材を削った箇所に詰めて修復を行ってゆきます。
レジンは保険適用可能な治療用素材で型取りの必要もなく、色合いも歯の色に近い白色で目立ちにくいという特徴がありますが、樹脂素材でできているため治療後数年経つと変色を起こす場合があります。

虫歯は、このC1までの段階であれば治療は非常にかんたんなもので済み、治療にかかる費用も少なくて済みます。
しかし、C1の段階を超えて次のC2に虫歯が進行してしまうと、治療にかかる時間が増えてしまい、費用も高くなってゆきます。

『C2』神経に近い場所に進行した虫歯(象牙質が虫歯菌によっておかされる)

 

[症状]

 

冷たいものがしみる

 

C2の虫歯はエナメル質の下にある象牙質という組織が虫歯菌によっておかされた状態を指します。
虫歯が象牙質まで到達すると歯の神経である歯髄により近くなるため、冷たいものがしみるようになるほか、食べ物を噛んだときなどに痛みを感じるようになります。


 

[治療方法]

 

歯を削り、型取りをしてインレー(詰め物)を詰める治療を行います。
ただし、C2の虫歯でも虫歯の穴が大きい場合にはインレーではなくクラウン(かぶせ物)をして治療を行うケースもあります。
C2の虫歯はC1の治療のときよりも歯の神経に近い場所を削るため、症状によっては局所麻酔の注射を用いて治療を行います。
詰め物であるインレーを作成するときにはまず型を取り、そのあとに型に合わせたインレーを作ってゆきますので、治療には時間が多少かかるようになります。

『C3』歯の神経にまで達した虫歯(歯髄が虫歯菌によっておかされる)

 

[症状]

 

何をしていなくても常に強い痛みがある

 

C3の虫歯は象牙質だけではなく、歯の神経である歯髄にまで虫歯が到達した状態です。歯の神経に達した虫歯は冷たいものだけではなく熱いものでもしみるようになるほか、食事以外の時間でも常に歯が強く痛むようになります。C3の虫歯になると症状によっては夜も眠れないほどの激痛を感じることも珍しくありません。


 

[治療方法]

 

局所麻酔をした上で虫歯を削り、歯の神経である歯髄を抜く抜髄(ばつずい)治療を行います。
C3の虫歯では歯の根の部分にまで虫歯菌が達しているケースも多いため、抜髄治療を行ったあとに歯の根っこの部分を掃除する根管治療(こんかんちりょう)を行うこともあります。
根管治療では、虫歯菌や細菌におかされた神経をファイルやリーマーなどの専用の器具を用いて取り除き、そのあとに薬剤を歯の根っこの部分に詰める根管充填を行います。
C3の虫歯には詰め物であるインレーを使うことはほとんどなく、歯をすっぽりとおおうことができるクラウンをかぶせて治療を行います。
このとき、歯を削る量が多く歯そのものの強度が失われるおそれがあるときには、土台となるコアを歯の中に入れてからクラウンをかぶせてゆきます。
なお、C3にまで進行した虫歯は激しい炎症を起こして歯の神経が腫れてしまっている場合も多く、神経が腫れて過敏な状態になっていると局所麻酔の注射が効かないケースもあるため、あまり炎症が激しく痛みが強いときにはひとまず痛みをおさえる薬剤を虫歯の穴に詰め、炎症がおさまるのを待ってからあらためて本格的な治療に入ることもあります。

『C4』歯が崩れ落ちた末期の虫歯(歯冠部分が虫歯菌によっておかされる)

 

[症状]

 

神経が死滅し歯の痛みを感じなくなる

 

C4の虫歯は歯の上部にあたる歯冠(しかん)部分のほとんどが虫歯菌によっておかされて腐ってしまい、外から見える歯の大部分が崩れ落ちて神経も死んでしまっているため、痛みを感じなくなります

痛みを感じなくなるC4の虫歯は「もう痛くないから」という理由で放置してしまうケースがあるのですが、この段階の虫歯をさらに放置すると今度は歯の根っこの先に膿がたまるようになります。
そして、根の先からあごの骨の中に侵入した虫歯菌などの細菌が炎症を起こすことによって強い痛みを感じるようになるほか、最終的にはあごの骨の中を通っている血管内部に虫歯菌が侵入して血流とともに全身をかけめぐり、敗血症や心筋梗塞などの命にかかわる重篤な症状をひきおこすこともあります。


 

[治療方法]

 

C4の末期の虫歯では、歯を残すことができそうな場合には根管治療を行い、土台となるコアを入れた上でクラウンをかぶせてゆきます。
ただし、この段階の虫歯は歯の根っこの神経がすべて死滅してしまっているケースも多いため、歯を残す保存治療が難しいと判断された場合には抜歯による処置を行うこともあります。
なお、抜歯をしたあとには部分入れ歯やブリッジ、インプラントなど各種の義歯治療を行ったのち、歯並びが乱れることを防ぐため、失われた箇所の歯と残っている歯のバランスをととのえてゆく治療を進めてゆきます。

虫歯放置でひきおこされる可能性がある病気について

虫歯を放置することは歯だけではなく全身にさまざまな悪影響をおよぼします。

  1. 骨髄炎

    虫歯を放置した状態が続いて神経が死んでしまうと、やがて歯の根っこの先に膿がたまってきます。
    この状態になると歯ぐきは炎症を起こして腫れてしまい、歯ぐきからは血や膿がでるようになるほか、さらに虫歯が進行すると今度は歯の根の先からあごの骨の中に虫歯菌が感染してしまい、骨髄がおかされて骨髄炎を発症することがあります。
    骨髄炎は高熱や嘔吐、全身のだるさなどの症状が続くのが特徴であり、病気が進行すると骨そのものが壊死してしまうため、治療では壊死した骨を取り除く外科手術を行う必要がでてきます。また、骨髄炎は治療が成功した場合でも骨が変形して顔の形がゆがんでしまうなど、後遺症が残るケースもあります。

  2. 敗血症

    通常、人の血液は白血球などの生体防御機能を持つ細胞によって免疫機能が働いており、血液内に細菌が侵入してもそれらの菌に身体が負けてしまうことはありません。
    しかし、虫歯を放置して骨髄炎になった状態が長く続くと虫歯菌が血流に乗って全身をかけめぐり、血液を腐敗させて敗血症をひきおこしてしまい、敗血症が原因となってときには死に至ることもあります。

  3. 心筋梗塞

    血管内部に虫歯菌が入り込むと血管の内膜にプラークができやすくなり、血流が悪化します。
    その結果、血栓が血管内にできてしまい動脈硬化がひきおこされるほか、動脈硬化が原因となって心筋梗塞など、命を落とす危険性のある病気を発症してしまうこともあります。

  4. 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

    虫歯菌は肺炎をひきおこすおそれがあることが指摘されています。
    お口の中にいる虫歯菌は、睡眠中などに唾液といっしょに飲み込んでしまうことがあるのですが、そのときに気管から肺の中に誤って唾液が侵入すると、虫歯菌によって肺炎(誤嚥性肺炎)がひきおこされるケースがあります。誤嚥性肺炎は特に免疫機能が低下しているご高齢者の方がかかりやすく、一度病気を発症すると高熱や激しい咳、呼吸困難といった症状が現れるのが特徴であり、重症化したケースでは衰弱したのちに死に至ってしまうこともあります。

虫歯の重症化を予防するには?

虫歯は一度発症すると自然治癒することはありません。
このため、虫歯は発症する前に「未然に防ぐ」ことがもっとも重要です。
また、もし歯に痛みがあればすぐに歯科医院で診察を受けると同時に、歯の痛みがなくても定期的に歯科医院で検診を受けることが虫歯の重症化を防ぐための大切なポイントとなります。

毎日行うプラークコントロールが基本となります

虫歯を未然に防ぐ(予防歯科)ためには、ご自分で毎日行うブラッシングによるプラークコントロールが予防の基本となります。
歯ブラシを使ってブラッシングを行う際には、力を入れすぎず、歯ブラシの毛先が寝てしまわない程度の軽い力で磨くようにしましょう。
力を入れすぎると逆に歯が傷つきやすくなり、プラークが傷ついた歯の表面の溝に入り込んで虫歯にかかりやすくなってしまいますので注意しましょう。

定期的に歯科医院で検診を受けることも重要です

虫歯を防ぐためには毎日のプラークコントロールが基本となりますが、歯ブラシを使って行う歯磨きだけではどうしても磨き残しが発生するなど、ご自身で行うブラッシングのみのケア方法は虫歯予防の観点から見ると完全とは言えません。
このため、日々のブラッシングを欠かさず行いながら、並行して1年に3~4回の頻度で定期的に歯科医院で歯の検診を受けることにより、虫歯の早期発見・早期治療が可能となります。
また、歯科医院では歯のクリーニングであるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)や歯石を取るスケーリング、虫歯になりにくくなるフッ素塗布などのプロケアを受けておくことで、虫歯にかかるリスクをより下げることができます。

虫歯は早期発見・早期治療が大切です

重症化してしまうと歯だけではなく全身性の病気など、命をおびやかす事態におちいることもあるこわい虫歯ですが、虫歯は早期に発見して早めに治療すればするほど、治療中の痛みも少なくて済み、虫歯を治すのに必要な費用も節約できます。

虫歯は発症してから治すのではなく、いかに「虫歯を未然に防ぐか」が重要となります。
虫歯が原因で歯を失わってしまわないようにするためにも、毎日のブラッシングによるセルフケアを行いながら歯科医院でのプロケアも合わせて活用し、ご自身の歯をいつまでも健康に保つことを心がけるようにしましょう。

TOP