「冷たいものや熱いものが歯にしみる」「夜も眠れないほど歯が痛む」「歯医者の“キーン”という音を聞くのがイヤ」など、虫歯になってしまうとつらいことが多いですよね。
虫歯になってつらい経験をすると、「もう虫歯にならないように歯を毎日しっかり磨くぞ」と決意をされる方も多いのですが、「毎日歯を磨いていてもなぜかまた虫歯になってしまう」、といったご経験はありませんでしょうか?
これは、残念ながら虫歯が「毎日の歯磨き」だけでは防ぐことが出来ないため、起きる現象でもあります。
こう聞くと「えっ?虫歯は歯磨きで防げるんじゃないの?」と言う方も多いかと思いますが、虫歯は毎日の歯磨きに加え、歯磨き以外の方法も組み合わせて行うことで初めて効果的・効率的に虫歯を予防出来るようになるのです。
ここでは、「家庭で出来る虫歯予防」と「歯科医院で行う虫歯予防」について詳しくお話をさせていただきます。
歯を磨いているのに虫歯になる、とお悩みの方は、ぜひ、今回の記事をご参考になさってみてくださいね。
目次
家庭で出来る虫歯予防
虫歯予防の基本は「毎日の歯磨き」
冒頭で「歯磨きだけでは虫歯は防げない」とお伝えしましたが、それでも、毎日行う歯磨きは虫歯予防の一番の基本となります。
虫歯予防ではなぜ、歯磨きが基本的なことになるのかについては、次の項でご説明します。
虫歯が出来るメカニズム
歯磨きがなぜ虫歯予防の基本となるのかについては、虫歯が歯に出来るメカニズムをまず理解しておく必要があります。
虫歯はお口の中にひそんでいるミュータンス菌という細菌が出す「酸」、そして食べものに含まれている「酸」によって歯が溶かされる「脱灰(だっかい)」という現象がきっかけとなり虫歯が始まります。
脱灰は歯の表面物質であるエナメル質が酸によって溶け出してしまう現象であり、脱灰が起きた歯の表面はざらざらした状態となります。
ざらざらとした歯の表面にはミュータンス菌がひそむプラークがさらに付きやすくなってしまい、プラークが歯に付着した状態が続くと今度は脱灰した箇所が乳酸菌であるラクトバチルス菌によってさらに深く大きくなってしまうのです。
これが、虫歯が出来るメカニズムです。
このため、歯の表面は出来るだけプラークがつかないように毎日歯磨きをして清掃することが、虫歯を防ぐための一番の基本となります。
①歯磨きは正しい方法で行うこと
「毎日歯を磨いているのに虫歯になる」という方は、誤った歯磨きの仕方で歯を磨いていることが原因で虫歯を発症しているケースが多いです。
歯磨きの際は力を入れて歯を磨いてしまうと歯の表面に傷がつきやすくなり、傷がついた箇所に食べカスやプラークが溜まりやすくなってしまい、虫歯になるリスクが上がってしまいます。
- ペンを持つように歯ブラシを軽く持つ
- 歯ブラシの毛先が寝ない程度の力で歯に当てる
- 一箇所を「20回(10往復)」磨くようにする
- 歯の前側なら前側、裏側なら裏側、かみ合わせ部分ならかみ合わせ、というように「同じ箇所」をぐるりと円を描くようにして順番に磨く
歯を磨く際には、上記を守ることで、磨き残しが出にくくなる効果があります。
②歯ブラシだけではなく歯間ブラシやデンタルフロス等も合わせて使うこと
ブラッシングによるプラークコントロールは虫歯予防の基本となりますが、歯ブラシを使った歯磨きだけでは十分とは言えません。
歯磨きの際には歯と歯のすき間には歯間ブラシやデンタルフロスを使用して汚れやプラークを落とし、親知らずや奥歯の磨きにくい場所は極小の歯ブラシのタフトブラシを使うことで歯のすみずみまで清掃出来るようになります。
歯磨き以外でも出来る虫歯予防の方法
①食事はよく噛んで食べること
脱灰によって溶け出した歯の成分は、唾液に含まれているカルシウムやリン酸によって修復され、溶け出した部分の組織が再度作られています。
この現象を「再石灰化」と呼びます。
唾液によって行われる歯の再石灰化は虫歯を予防するための最重要項目の一つであり、虫歯を防ぐためには再石灰化をうながしてあげることが大切です。
再石灰化は唾液によって行われるため、普段の食事を出来るだけよく噛んで食べるようにすることで、唾液が多く分泌されて虫歯を予防する効果を高めることが出来ます。
②ガムを噛んで唾液の分泌をうながす
食事の時間以外にも、ガムを噛むことで唾液が分泌されるようになり、虫歯予防の効果が高まります。
ガムを噛む際には砂糖が含まれているものは避け、キシリトールなどの歯に優しい人工甘味料が含まれたものを選ぶようにしましょう。
③フッ素入りの歯磨き粉を使う
フッ素は歯の中に取り込まれることによって歯質を強化する作用があるため、ブラッシングのときに使う歯磨き粉をはフッ素入りの歯磨き粉を選ぶことでより効果的に虫歯を予防出来るようになります。
ただし、フッ素は使いすぎると効果が薄れるため、使用する際には使いすぎないよう注意が必要です。
歯科医院で行う虫歯予防について
①歯のクリーニング、歯石取り(スケーリング)
家庭で行うご自身の歯磨きでは磨き残しが出やすく、歯についたプラークや汚れはどうしても残ってしまいます。
このため、毎日の歯磨きと合わせて歯科医院で行う歯のクリーニングや歯石取り(スケーリング)を定期的に受けることにより、より虫歯を予防する確率を高めることが出来ます。
②歯の定期検診
歯の定期検診は虫歯がないときでも定期的に受けることにより、虫歯を未然に防ぐことが出来るようになるほか、虫歯が見つかったときには早期の治療が可能となります。
虫歯は年齢が高くなるほど、歯周病の影響で歯ぐきが下がって歯の根面が露出することにより虫歯になるリスクが上がりますので、歯の定期検診を受ける頻度としては、
- ・20歳未満 「1年に1度」
- ・20代から30代まで 「半年に1度」
- ・30代から40代まで 「3ヶ月から5ヶ月に1度」
- ・40代以上 「3ヶ月に1度」
で受けるようにするとよいでしょう。
上記では年齢が重なる時期がありますが、これは、虫歯になりやすくそれまでに虫歯を何度も治療している、歯周病をわずらっている、などの要素が多い場合には、20代であっても3ヶ月に1回の頻度で歯科医院で定期検査を受けた方が良い、といったケースがあるためです。
定期検診を受ける際にはかかりつけの歯科医師に相談した上で、ご自身の症状に合わせて定期検診を受ける頻度を決めることをおすすめします。
正しいセルフケアとプロケアで歯をいつまでも健康に保つことを心がけましょう
「家庭で出来る虫歯予防」、そして「歯科医院で行う虫歯予防」についてご紹介しました。
歯は、自分では毎日の歯磨きを行うことで虫歯予防をしているつもりでも、どうしても磨き残しが出てしまったり、歯磨きの仕方が間違っていることなどが原因で虫歯にかかりやすくなってしまいます。
虫歯を効果的に防ぐためには、毎日の歯磨きによるプラークコントロールに加えてプロケアである歯科医院でのクリーニングや歯石取り、定期検診を受けることが重要となります。
天然の歯は一度傷つき抜けてしまえば二度とは元に戻らない、かけがえのない身体の一部です。
大切な歯を失わないためにも、日々の歯磨きによるセルフケアと歯磨き以外の虫歯予防の方法をしっかりと実践し、合わせて歯科医院でプロケアを受けるようにして、ご自身の歯をいつまでも健康に保つことを心がけるようにしましょう。