「なんだか歯ぐきが腫れてきたような気がする・・・」
「歯と歯のあいだのすき間が大きくなってきた・・・」
「歯が前よりも長くなってきた・・・」
もし、このような症状があれば歯周病の疑いがあります。
歯周病は歯ぐきが腫れたり出血するなどの症状が出てくるほか、悪化すると歯が突然抜け落ちてしまったり、全身のさまざまな病気をひきおこすこともあります。
今回は、「歯周病の症状を見極めるコツ」と「歯周病の悪化を食い止める方法」についてご説明をさせていただきます。
目次
歯周病っていったいどんな病気?
歯周病とは、お口の中にひそんでいる歯周病菌が歯ぐきの炎症を起こしたり、あごの骨を溶かしてしまう病気です。
歯周病は今では日本人の成人の「8割以上」の人がかかっているとされており、「国民病」と表現されることもあります。
歯周病は主に50代以上の中年世代、ご高齢の方に特に多い疾患ですが、現在は15歳~24歳の若年層の世代の方もおよそ7割以上に歯ぐきの炎症などの症状が見られ、年齢にかかわらず多くの方が歯周病にかかっていることが明らかになっています。
歯周病の進行度合いと呼び名について
歯周病は進行度合いによってそれぞれ発生する症状が異なり、呼び名も変わってきます。
初期段階の歯周病は「歯肉炎」、中期段階の歯周病は「歯周炎」、重度の歯周病は「歯周炎(歯槽膿漏:しそうのうろう)」と、呼び名が変わるのが特徴です。
以前は歯周病そのものを「歯槽膿漏」と呼んでいたこともありましたが、現在では重度の歯周病である「歯周炎」のことを分かりやすくするためにあえて「歯槽膿漏」と呼ぶことはあるものの、重度の歯周病も本来の呼び名は「歯周炎」であり、歯槽膿漏という言葉自体はあまり使われなくなってきています。
歯周病の症状を見極めるコツ
1.初期段階の歯周病(歯肉炎)の症状を見極める方法
- ・ 歯ぐきが赤く腫れている
- ・歯ぐきを指で押したときに「ブヨブヨ」とした感覚がある
- ・歯磨きの際に歯ぐきから血が出る
- ・起床時に「お口の中のねばつき」を感じる
初期段階の歯周病は「歯肉炎」と呼びます。
歯肉炎は日本人全体のおよそ7~8割がかかっている病気であり、20歳代の若年層の方から40歳代の中年世代の方の多くに歯肉炎の症状が見られます。
歯肉炎の症状は歯周病ではなくても発生することがあるため見落としやすく、歯肉炎を放置してしまったことが原因で中期段階の歯周病である歯周炎へと病気が進んでしまうことも珍しくありません。
治療方法
- ・歯ブラシを使って行う毎日のブラッシング(プラークコントロール)
- ・歯のクリーニング(特に歯の根面部分の歯周ポケットのお掃除)
- ・歯石取り(スケーリング)
初期段階の歯周病である歯肉炎は早期であればご自分で行う毎日のブラッシングで症状を完治させることも可能です。
しかし、歯石が歯に付着していたり、歯と歯ぐきのあいだの歯周ポケットにプラークや汚れがたまっている場合には、歯科医院での治療が必要となります。
2.中期段階の歯周病(歯周炎)の症状を見極める方法
- ・歯ぐきが全体的に腫れ、赤紫色に変色してくる
- ・歯ぐきを指で押したときに「ブヨブヨ」とした感覚がある
- ・歯磨きの際に歯ぐきから血や膿が出る
- ・強い口臭が出てくるようになる
- ・歯ぐきが下がり歯が長く見えるようになる
- ・歯全体がグラグラと不安定になる
中期段階に症状が進行した歯周病は「歯周炎」と呼びます。
歯周炎と歯肉炎は文字は似ていますが、中期段階の歯周炎の方が症状はより重くなります。
また、歯肉炎が主に20歳代から40歳代の方に多いのに対し、歯周炎は30歳代から70歳代までと、幅広い年齢層の方が歯周炎をわずらっている、という特徴があります。
中期段階の歯周病である歯周炎になると、上記の症状が現れるほか、「歯を支えているあごの骨の歯槽骨が溶け始める」といった症状も出てきます。
治療方法
- ・ 歯ブラシを使って行う毎日のブラッシング(プラークコントロール)
- ・歯のクリーニング(特に歯の根面部分の歯周ポケットのお掃除)
- ・歯石取り(スケーリング)
- ・歯ぐきを切開して中の汚れを清掃するフラップ手術
中期段階の歯周病である歯周炎の治療においては、歯周ポケットの溝が開いてしまい、溝の奥深くにまでプラークや歯石が入り込んでしまっている場合、歯ぐきを切開して歯周ポケットの奥深くに溜まったプラークや歯石を清掃して落とす「フラップ手術」を行うこともあります。
歯を支えているあごの骨が溶け始めるなど、症状が重くなる歯周炎ですが、まだこの段階であれば歯周病専門の歯科医院で治療を受けることにより、歯を残せる確率は高くなります。
3.重度の歯周病(歯槽膿漏)の症状を見極める方法
- ・ 歯ぐき全体が腫れ、赤紫色や赤黒い色に変色してくる
- ・歯ぐきを指で押したときに「ブヨブヨ」とした感覚がある
- ・歯磨きの際に歯ぐきから血や膿が出る
- ・「玉ねぎが腐ったような」非常に強い口臭が出てくるようになる
- ・歯ぐきが大きく下がって歯が長くなり、歯の根の部分が常に露出した状態になる
- ・食べ物をしっかりと噛むことが出来なくなり、食事以外のときも歯ぐきやあごの骨に強い痛みを感じるようになる
- ・歯全体がグラグラと不安定になり、自然に抜け落ちてしまうこともある
中期段階からさらに症状が進行した重度の歯周病は同じく「歯周炎」に分類されますが、重度の歯周病はあえて「歯槽膿漏」という言葉で進行段階を表現することもあります。
重度の歯周病にまで症状が進行すると、歯を支えているあごの骨である歯槽骨がほぼ半分以上溶けてしまうため歯が不安定な状態となり、食べ物をまともに噛むことが出来なくなるほか、食事以外の時間においても強い痛みを歯ぐきやあごの骨に常に感じるようになります。
また、歯槽膿漏の段階にまで歯周病が進んでしまうと「玉ねぎが腐ったような臭いの強烈な口臭」が発生するほか、「自然に歯が抜け落ちる」などの症状も出てきます。
治療方法
- ・歯ブラシを使って行う毎日のブラッシング(プラークコントロール)
- ・歯のクリーニング(特に歯の根面部分の歯周ポケットのお掃除)
- ・歯石取り(スケーリング)
- ・歯ぐきを切開して中の汚れを清掃するフラップ手術
- ・歯周病菌に破壊された歯ぐきや溶けてしまったあごの骨を再生する「歯肉再生」「組織移植手術」
- ・あらゆる方法を尽くしても治すことが出来ない場合には抜歯
- ・抜歯をしたところに部分入れ歯やブリッジ、インプラント等の義歯を入れる
- ・歯並びが乱れてしまっているケースでは必要に応じて矯正治療で対処する
歯周病は早期発見、早期のケアが大切です
「歯周病の症状を見極めるコツ」と「歯周病の悪化を食い止める方法」についてご説明をさせていただきました。
歯周病は初期段階であればご自身で行うブラッシングによって症状を完治させることも可能です。
しかし、歯周病は症状が進めば進むほど、治療にかかる時間と費用が増えてしまいます。
また、歯周病は症状が進むほど、歯を残せる確率が低くなります。
大切な歯を歯周病で失わないようにするためには、日ごろから患者様ご自身が歯周病予防に対する意識を持ち、毎日しっかりと歯磨きによるプラークコントロールを行うことが重要です。
また、セルフケアと合わせて定期的に歯科医院を訪れて歯周病の検査を受け、早期発見・早期治療を心がけるようにしましょう