放置していると全身へ悪影響が!虫歯を放置してはいけない理由

虫歯は日本人の「9割がかかった経験がある」、国民病とも言える病気のひとつです。

ご自身が虫歯になったり、虫歯にかかった人を見たことがある方も多いことでしょう。
このように、悪い意味で一般的になってしまっている虫歯は、症状がでても治療を受けず、ついつい放置してしまう方が少なくありません。
しかし、虫歯は放置していると歯が痛むだけではなくあごの骨を溶かしてしまったり、最悪のケースでは命にかかわる全身性の病気が虫歯によってひきおこされることもあります。
虫歯はけっして、「歯だけの病気」ではないのです。
今回は、「放置していると全身に悪影響をおよぼす!虫歯を放置してはいけない理由」についてお話をさせていただきます。

■虫歯の痛みは段階的に強くなります

虫歯は、歯の表面物質であるエナメル質にできたばかりのときには、痛みを感じることはありません
しかし、エナメル質の下にある象牙質に虫歯が到達するとじょじょに歯に痛むようになり、さらに歯の神経である歯髄という部分に虫歯が進行すると、ズキズキとした強い痛みを常に感じるようになります。
そして、虫歯が歯の根っこの部分である根管にまでおよんでしまうと、夜も眠れないほどの非常に強い痛みを感じるようになってしまいます。
通常であればこの段階でほとんどの人は歯科医院を受診して治療を受けるのですが、根管にまでおよんだ虫歯をさらに放置すると、やがて歯の神経と歯の組織そのものが死滅して崩れ落ち、痛みを感じなくなります。

■痛みを感じなくなった虫歯のおそろしさ

歯の神経が死滅して歯が崩れ落ちた状態の虫歯は痛みを感じなくなるため、「あれ?もう痛くないから平気なのかな」と治療をせずに虫歯を放置してしまう方がいるのですが、非常に危険です。
なぜなら、虫歯は歯が崩れ落ちて神経が死滅したあと、今度は歯をささえているあごの骨である歯槽骨に侵入し、あごの骨の中を通っている血管の中に入り込んで血液とともに虫歯が全身をかけめぐってしまうためです。
そして、血管に入り込んだ虫歯菌が血液といっしょに全身をかけめぐると、さまざまな病気が虫歯によってひきおこされます。

■虫歯は「心筋梗塞」や「脳梗塞」をひきおこします

虫歯を治療せずに放置していると、あごの骨の中の血管に虫歯菌が入り込んでしまい、血液とともに虫歯菌が全身をかけめぐり、「心筋梗塞」「脳梗塞」などの病気をひきおこすことがあります。
虫歯や歯周病菌は血管の中に入ると血管内部に炎症をおこす、という性質があります。
このため、虫歯菌が血管に入り込むと炎症がおきて血管の内部が腫れ、血流が阻害されて血液がドロドロした状態になります。
そして、血管内部にドロドロした血液が流れるようになると血栓ができやすくなり、血栓が血管を詰まらせることによって「心筋梗塞」「脳梗塞」などの命にかかわる病気を発症してしまうのです。

■虫歯は「食欲不振」や「肺炎」をひきおこします

虫歯を放置した状態で食事を取ると、食べ物をそしゃくするときに唾液に虫歯菌が混ざるようになり、唾液とともに虫歯菌が体内へと入り込んでゆきます。
そして、体内に入り込んだ虫歯菌は食道や胃などの消化器系の器官に侵入し、炎症をひきおこすことがあります。
さらに、虫歯菌によって食道や胃に炎症がおきると「食欲不振」「胃の不快感」「吐き気」などを覚えるようになり、これらの症状が原因で食事を満足に取れなくなり栄養失調におちいるケースもあります。

また、食べ物や飲み物を飲み込む機能が弱まっているご高齢の方は誤嚥(飲食物が誤って気管内や咽頭部分に入り込んでしまうこと)しやすく、虫歯にかかった状態で誤嚥をおこすと虫歯菌を含んだ唾液が肺の中に侵入し、「肺炎」をひきおこす場合があります。

■そのほかにも虫歯はさまざまな悪影響を全身におよぼします

●顔面神経の麻痺・顔の形が変わる

虫歯にかかると歯の痛みによって顔の筋肉が緊張し、こわばります。
通常であれば虫歯を治すことでこの顔の筋肉の緊張は解けるのですが、虫歯を放置していると顔の筋肉が緊張した状態が長く続くこととなり、やがて顔の筋肉全体が正常に動かなくなってゆきます。
その結果、顔の表情をコントロールしている顔面神経が麻痺し、「顔半分がビリビリとしびれる」「目や口の周りの筋肉をうまく動かせなくなる」といった症状がおきることがあります。
また、歯槽骨に侵入した虫歯はあごの骨を溶かしてしまうため、「顔がゆがむ」「顔の形が左右非対称になる(もともと人の顔の形は左右非対称ですが、見た目にもはっきり分かるレベルでバランスが崩れてしまう)」などの症状がでることもあります。

●感染症

虫歯はそもそもミュータンス菌という細菌によってひきおこされる感染症の一種なのですが、ご高齢の方や病気が原因で抵抗力が弱まっている方が虫歯を放置すると、体内に入り込んだ虫歯が全身をかけめぐって各器官に感染症をおこしてしまい、最悪の場合は死にいたることもあります。

●糖尿病

虫歯にかかると歯が痛むため、食べ物を噛んで食事をすることがじょじょにむずかしくなってきます。
そして、歯が痛むから、という理由でやわらかい麺類やおかゆ、プリンやエナジーゼリー、ジュースなどの「ほとんど、またはまったく歯を使わずに食べることができるもの」を日常的に摂取するようになります。
これらのやわらかい食べ物はかまずに飲み込めるため食べすぎにつながってしまうほか、普段の食生活で大量の炭水化物(糖質)が体内に入ることによって血糖値が急激に上昇、血糖値を下げる働きがあるインスリンの分泌異常をひきおこし、糖尿病を発症するリスクを上げてしまいます。

【虫歯は早期発見・早期治療が大切です】

歯の痛みだけで済む、と思われがちな虫歯ですが、虫歯は心筋梗塞や脳梗塞を始めとして、全身性のさまざまな病気をひきおこすおそれがある怖い病気です。
虫歯は早く発見すればするほど、そして、早く治療すればするほど、治療時に感じる痛みや発生する症状を最小限におさえることができます。
また、虫歯は早期の段階であれば治療にかかる費用も少なくて済みます。

現在はインプラントなどの義歯が発達しているため、歯がなくなった場合でも義歯によってかなりのレベルまで歯の機能を取り戻すことができますが、天然の歯にまさるものは何一つとしてありません。
かけがえのない大切な歯を虫歯で失わないようにするためにも、歯の痛みがあればもちろん、症状がない場合でも定期的に歯科医院で検診を受け、早期発見・早期治療で虫歯を早めに治すことを心がけるようにしましょう。

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