「歯並びを治したいんだけど、矯正治療はどれくらいの期間がかかるの?」
「矯正治療って、痛いのかな?」
「矯正で器具が目立たない方法って、あるのかな?」
日本においてはこれまで、歯列矯正は「痛い」「矯正器具が目立つ」「費用が高い」などの理由で避けられがちでしたが、現在では矯正の技術も進化して痛みの少ない矯正治療も広く浸透しており、患者様が治療中に感じるストレスは以前よりも減ってきています。
また、矯正器具も目立たないものが登場するなど、歯列矯正は日本人にとってより身近な“お口のみだしなみ”として親しまれるようになってきました。
ここでは、歯列矯正を受ける前に知っておきたい注意点と、治療を終えたあとにどのような点に気をつければよいのかについて詳しくご説明をさせていただきます。
目次
■歯列矯正はどんな歯科医院を選べばよいの?(医院選びの注意点)
快適な治療生活を送るため、そして患者様がお望みになる「理想の歯並び」を手に入れるために、まずはご自分に合った歯科医院を選ぶようにしましょう。
◎矯正歯科選びのポイント
1.治療の実績と経験が豊富な歯科医師がいる
歯列矯正においてもっとも重要なのは、術者である歯科医師の治療実績と経験が豊富なことです。
矯正歯科を選ぶ際に特におすすめする見極め方の一つに、すきっ歯であればすきっ歯(正中離開、空隙歯列)、出っ歯であれば出っ歯(上顎前突)というように、患者様ご自身の症状と似ている歯並びの方を治療した経験が豊富な歯科医師を選ぶ、という方法があります。
矯正治療を行う歯科医師も治療の内容によっては苦手な分野と得意な分野があるため、患者様ご自身の症状と同じような歯並びを治した経験が多い歯科医師の方が、矯正治療が成功する確率が高くなります。
2.歯列矯正を始める前に、歯科医師が治療計画、総額費用、デメリットについてきちんと話してくれる
歯列矯正は原則として保険が効きません。
このため、矯正を始める前には治療を担当する歯科医師が治療の計画や矯正にかかる総額の費用、そして矯正治療のデメリットについてきちんと説明してくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。
また、歯列矯正は必ずしも計画どおりに治療が進むとは限らず、ときに治療期間が延長されたり、追加分の料金が発生するケースもありますので、その点も含めて治療前には歯科医師の説明をしっかりと聞いておき、ご納得の上で治療を受けることをおすすめします。
3.患者様の疑問や不安にいつでも何度でも親切に答えてくれる
歯列矯正は平均でおよそ2年~3年と長い期間をかけて治療を行いますので、患者様は歯科医師と長いお付き合いをすることとなります。
このため、矯正歯科を選ぶ際には患者様の疑問やお悩み、不安にいつでも何度でも親切に答えてくれる歯科医師がいる医院を選ぶとよいでしょう。
また、院内の雰囲気や受付、助手の対応のよさも矯正歯科選びの一つのポイントとなります。
4.最新の設備や機器をそろえている
これは必ずしもすべての矯正歯科にあてはまることではないのですが、矯正治療の分野は日々進歩しているため、矯正を行う歯科医院には最新の設備や機器をそろえておくことや、治療を担当する歯科医師には常に技術の研鑽に励む姿勢が求められます。
もちろん、院内の設備や機器が最新ではなくても高い技術と豊富な経験を持つ歯科医師がいない訳ではありませんが、設備や機器が常に新しく、歯科医師が高い技術を持っていればおのずと矯正治療の成功率は上がります。
矯正歯科選びの際には「最新の設備や機器がそろっているかどうか」を一つの判断材料として頭の中に入れておくことをおすすめします。
5.院内が清潔に保たれている
治療を行う診療台や、患者様のお口に直接ふれる器具が汚れていたりさびているような歯科医院は感染症防止の観点から見ればあまりおすすめできるところではありません。
歯列矯正をお受けになる前には、院内が清潔に保たれており感染予防の意識が高いことがうかがえる歯科医院を選ぶようにしましょう。
6.通いやすい場所にある、または診療時間内に無理なく通える場所にある
歯列矯正は平均でおよそ2~3年と長い治療期間をかけるため、矯正歯科を選ぶ際には患者様ご自身が通いやすい場所に位置している歯科医院を選ぶのが理想です。
しかし、矯正歯科は都市部やその他の地方によって医院の数に地域差が存在しているのも事実ですので、もし、ご自宅から離れた遠方の矯正歯科を選択される場合には、診療時間内にご自身が無理なく通えるか、そして予約をした日に余裕を持って通院できるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
◎事前に複数の歯科医院を訪れ、歯科医師に治療の相談をすることをおすすめします
歯列矯正は歯科医院ごとに治療方式や費用が異なるため、可能であれば事前に複数の歯科医院を実際に訪れ、歯科医師に矯正治療の相談を行いご自身がご納得した上で治療をお受けになることをおすすめします。
■歯列矯正でかかる費用はどのくらい?(費用のチェック)
歯列矯正でかかる費用は歯科医院ごとによってそれぞれ異なりますが、成人の方の歯列矯正の場合には80万円~110万円前後が一般的な総額費用となります。
◎治療費一覧
・マウスピース(クリアライナー)矯正
上下の歯および咬合調整・・・70万円程度
上、下どちらかの片あごおよび咬合調整・・・40万円程度
毎回の診察料・・・無料
矯正前の精密検査、診察料・・・無料
・ワイヤー(表側)矯正
上下の歯および咬合調整・・・90万円程度
上、下どちらかの片あごおよび咬合調整・・・60万円程度
毎回の診察料・・・5,000円程度
矯正前の精密検査、診察料・・・5,000円程度
クリアセラミックを使用した場合・・・+10万5,000円程度
・子どもの矯正治療
第1期治療(永久歯が生えそろう前に行う矯正治療)・・・20万円程度
第2期治療(永久歯が生えそろってから行う矯正治療)・・・40万円程度
・処置料(調節料)、経過観察料
毎回につき5,000円程度
矯正治療中は月に1~2回、経過観察中は2ヶ月~半年に1回程度の頻度で矯正器具のチェックや調節を行います。
・保定装置(リテーナー)料
1個につき10,000円程度
リテーナーとは、矯正治療が終了したあとに発生する「後戻り」を防ぐために取り付ける装置のことです。
・治療中と治療後の検査料
各回につき5,000円程度
矯正治療が終了したあと、および子どもの第1期治療から第2期治療へ移行する際には、患者様の歯型や口腔内、顔面の写真をお撮りします。
(※ 上記の価格は歯科医院ごとによって異なります。)
■矯正治療中・治療後の注意点 ~Q&A~
Q.矯正治療中は虫歯になりやすいって、ホント?
A:
矯正治療中はお口の中に矯正器具があるためブラッシングがしにくかったり、食べカスが矯正器具に付着してしまったりと、虫歯にかかるリスクが高くなります。
また、矯正器具を歯に装着していることで唾液による殺菌や再石灰化などの作用も弱まりますので、矯正期間中にはいつもよりも念入りにブラッシングをする必要があります。
(ただし、クリアライナーを使用して行うマウスピース矯正の場合にはマウスピースをはずしてからブラッシングをすることが可能なため、歯磨きはいつもどおりでOKです。)
矯正治療中のブラッシングの方法については、歯科医院で効率的・効果的な歯磨きの仕方を教えてくれますので、ぜひ、ご参考にしていただき、お口の中を清潔に保つことを心がけるようにしてください。
Q.矯正治療中の歯磨きの仕方を教えて欲しい
A:[ワイヤー矯正の場合]
矯正治療中に使用する歯ブラシはお口の中で小回りが利きやすい小さなヘッドの歯ブラシを用意します。
そして、ブラッシングの際には歯と歯ぐきの境目をしっかり磨くとともに、歯とブラケットが接している周辺の箇所は汚れがつきやすいので特に念入りに磨くようにしてください。
治療中に使用する歯ブラシについては、専用の「矯正用歯ブラシ」もありますのでそちらを活用するのもよいでしょう。
また、歯科医院ではブラッシング方法や歯ブラシの選び方など、矯正治療中のサポートを受けることが可能ですので、ケア方法で分からないことや不安なことがあれば気軽に担当の歯科医師に相談してみましょう。
A:[マウスピース矯正(クリアライナー)の場合]
クリアライナーを使用して行うマウスピース矯正では、治療期間中にご自由にマウスピースを取り外すことができるため、ブラッシングはマウスピースを取り外した上でいつもどおりの方法で行ってもらってかまいません。
なお、通常のブラッシング方法についてはワイヤー矯正と同様に歯科医院が磨き方のサポートをしてくれますので、ブラッシング指導を受けたい場合には歯科医師に尋ねてみましょう。
Q.治療中に食べたり飲んだりしちゃいけないものはある?
A:
ガムやキャラメル、お餅などの粘着性の高い食べ物は歯や矯正器具に付着しやすいため、控えるようにしてください。
また、おせんべいやおかき、氷やナッツ類などの硬いものも矯正器具を傷つけてしまうおそれがありますので、極力避けた方がよいでしょう。
もし、これらの硬いもの食べる場合には細かく砕いてから食べるようにしましょう。
さらに、カレーやキムチなどの着色性の強い食べ物は矯正器具に色が沈着してしまう可能性があり見た目も悪くなりますので、あまりおすすめできません。
飲み物については、コーヒーや紅茶、ワインなどは同じく着色性が強く矯正器具が汚れるおそれがありますので、できるだけ控えるようにしましょう。
Q.治療中に矯正器具のせいで痛くなったらどうすればイイの?
A:
歯列矯正は、矯正器具を装着して間もないつけ始めのときにはブラケットやワイヤーがお口の中にあたってしまい、痛む場合があります。
つけ始めの痛みは早ければ2、3日、長くても1週間程度で通常はおさまりますが、もし、痛みが続くようであればご遠慮せずに歯科医師に相談してください。
歯科医院で状態を確認した上、専用のワックスを使い器具をカバーするなどの方法で痛みを軽減することができます。
Q.治療中に矯正器具がはずれてしまったら?
A:
もし、治療中に矯正器具がはずれてしまった場合には、できるだけ早いうちに歯科医院に連絡をして取り付けと調整を行ってもらうようにましょう。
Q.矯正は歯を抜かなければいけないの?
A:
すべての歯列矯正において、治療前は必ず抜歯をしなければいけない、ということはないのですが、歯を抜いた方が矯正効果が高まると判断されたときには抜歯を行ったのち、治療を進めてゆくケースがあります。
なお、歯を抜く際には患者様に許可をいただいた上で抜歯を行います。
患者様の意思に反して歯を抜く、といったことはありませんのでご安心ください。
Q.保定装置(リテーナー)ってなに?
A:
保定装置(リテーナー)とは、矯正治療を終えたあとに患者様の歯並びが元に戻ってしまう(後戻り)のを防ぐために歯に取り付ける装置のことを指します。
リテーナーの種類はワイヤー型やマウスピース型がありどちらも簡易的な機構となっていますので、保定期間中に装着するリテーナーは通常のブラケットやワイヤーで構成されている矯正器具よりも目立ちにくくなります。
なお、リテーナーは矯正終了後1年間のあいだ、患者様に装着していただきます。
Q.治療後に歯並びが元に戻ってしまうことはあるの?
A:
歯列矯正では、動かした歯が元の位置に戻ってしまう「後戻り」が起こる可能性はあります。
後戻りが発生する原因はさまざまですが、「保定期間が十分ではなかった」「かみ合わせの調整をきちんと行っていなかった」「(マウスピース矯正の場合)定められた装着時間を守っていなかった」などの理由で歯並びが元に戻ってしまうことがあります。
これら後戻りを起こさないためには、治療後にしっかりとメンテナンスとケアを続けてゆくことが重要です。
【歯列矯正を成功させるためには患者様と歯科医師が信頼関係を築くことが大切です】
「歯列矯正 治療前~治療後の注意点」についてご説明をさせていただきました。
歯列矯正は平均で2~3年という非常に長い治療期間がかかるほか、高額な費用も必要となります。
長い治療期間のあいだには患者様が治療中に痛みを感じてしまったり、矯正器具に故障や異常が発生する、または思ったような矯正効果が得られなかった、などのトラブルが起きるケースもあります。
それだけに、歯列矯正を行う際には患者様と歯科医師が相互に信頼関係を築き、どんなことでも気軽に、かつ綿密に話し合える「タッグチーム」を作ることが大切です。
理想の歯並びを手に入れるためにも、治療前には必ず患者様ご自身が「歯列矯正のリスク」についてしっかりと知識をつけ、分からない点や不安な点があればすべて歯科医師に尋ねておき、十分にご納得した上で矯正治療を始められることをおすすめします。