歯並びが悪くなる悪習慣とは?歯並びを良くする最新の矯正方法もご紹介

歯と歯のあいだが開いている「すきっ歯」、上あごの歯が前に突き出ている「出っ歯」、そして下あごの歯が前に突き出ている「受け口」など、歯並びの乱れにはさまざまな症状があります。

これらの歯並びの乱れは、遺伝的(先天的:生まれつき)な要素によって現れてくることもあるのですが、実際に歯並びを乱れさせているのは生まれつきの遺伝的要素よりも後天的な要素、つまり「悪い生活習慣」によって生じているケースが多いのです。

ここでは、歯並びが悪くなる原因や悪習慣、そして歯並びを良くする最新の矯正方法についてご紹介いたします。

歯並びが悪くなる原因

 遺伝的要素によって生まれつき歯並びが乱れている場合

 「歯の本数が生まれつき少ない(多い)ため歯並びが悪い」「歯の形そのものが悪い」「歯の大きさが不ぞろい」「上下のあごの骨の位置やバランスが乱れており歯並びが悪い」、といったケースでは、遺伝的な要素によって歯並びが乱れている可能性があります。

たとえば、おじいちゃんやおばあちゃん、そしてご両親に出っ歯や受け口などの症状が見受けられる場合、生まれてくる子どももそのような歯並びになる確率が高いです。

さらに、ご両親に出っ歯や受け口など歯並びの乱れがない場合でも、遺伝子として受け継いだ歯の形状や大きさ、上下のあごの骨のバランスがのちのちになって子どもの歯並びを乱れさせる原因になることもあります。

また、歯の本数が生まれつき足りない先天性欠如についてですが、人の歯は本来であれば乳歯が20本で永久歯が28本(親知らずを含めると32本)あるのに対し、ある調査(※)では7歳以上の子どもの0.5%に乳歯の先天性欠如、10%の子どもに永久歯の先天性欠如が認められたことが明らかになっています。

 

(※ 2007-2008 日本小児科学会学術委員会よる「日本人の小児における永久歯先天性欠如に関する疫学調査」調べ)

 

そして、先天性欠如だけではなく生まれつき歯の本数が多い過剰歯も歯並びを乱れさせる原因になることがあります。

もちろん、これらの遺伝的要素が存在していても必ずしも歯並びが悪くなる、という訳ではなく、歯並びが乱れることなく治療が不要であるケースも少なくありません。

もし、ご自身のご家系の歯並びに関する遺伝的要素にご不安がある場合には、一度、歯科医師に相談してみることをおすすめします。

後天的要素によって歯並びが悪化するケース

歯並びの乱れは遺伝的要素によっても引き起こされますが、実は、歯並びの乱れは後天的な要素が原因となって発生することの方が多いです。

歯並びの乱れを引き起こす原因には、以下のものがあります。

幼少期から舌と唇の動かし方が悪い、動かし方が適切でない

子どもの頃からあまり舌と唇を動かさずにぼそぼそしゃべる、いつも口を開けている、といった人は口のまわりの筋肉が衰えやすく、舌の位置が適切でない場所にあることが多いため舌によって歯が押されてしまい、歯並びが乱れやすくなります。

舌は本来、上あごの裏側に軽くふれているのが正しい状態です。

しかし、舌の位置が常に低い位置にあり、いつも舌の先で歯を裏側から押している人は下あごの歯が前に押し出されて「受け口」になることがあります。

また、唇は歯が前方に押し出されるのを防ぐ役割を持っているのですが、ぼそぼそとしゃべる人は口のまわりの口輪筋(こうりんきん)という筋肉が弱まり唇をきちんと閉められなくなってしまい、出っ歯やすきっ歯などの歯並びの乱れが起きることがあります。

口呼吸(鼻で呼吸していない)

通常、歯は口の筋肉である口輪筋が内側に押し、舌が歯の裏側から外側に押すことでバランスが保たれています。

しかし、鼻で呼吸をせずに口だけで息をする口呼吸の状態が続くと、常に口がポカンと開いた状態(いわゆる「しまりのない口元」)となって口輪筋が衰えてしまい、歯が前方に突き出しやすくなります。

日ごろの悪いクセ、悪習慣

 

【指しゃぶり】

指しゃぶりは赤ちゃんの頃の名残としてクセがついてしまう子どもが多いです。

もちろん、授乳期の赤ちゃんが指しゃぶりをするのは自然な現象であり問題はないのですが、赤ちゃんから幼児、さらにそのあとも指をしゃぶるクセがついてしまうと指しゃぶりによって前歯が前方にひっぱられ、出っ歯になることがあります。

【爪をかむ】

人間の爪はケラチンというタンパク質の一種から作られており非常に硬い組織なのですが、爪をかむクセを続けていると前歯に大きな負担がかかってしまい、下あご部分の歯が前に突き出る受け口が進行するリスクが高くなります。

特に子どものころの爪かみグセは成長期の歯ぐきに非常に大きな負担をかけてしまい、歯並びに悪い影響がでやすくなりますので注意が必要です。

また、爪かみグセによって負担がかかることにより前歯の根が浅くなる、前歯の先端部分が変形してくる、などの異常が発生するケースもあります。

【下唇をかむ】

唇をかむクセ、特に幼少期に下唇をグッとかむクセは、上下の前歯の歯並びを悪化させる原因になることがあります。

普段から下唇をかんでいると、上あごの前歯は通常の状態よりも外側に押され、下あごの前歯は上の前歯とは逆方向である内側に押されるようになります。すると、上の前歯は外側へ押されて出っ歯になり、下の前歯は内側に倒れてしまいます。

出っ歯になったあともさらに下唇をかみつづけていると、今度は上の前歯の歯並びが乱れて歯と歯の間が開くすきっ歯になってしまったり、内側(舌側)に倒れてすき間がなくなった下の前歯が内側や外側に向かって生えてしまい、でこぼこ歯になる可能性が高くなります。

【頬杖・横向き(同じ側だけ)で寝る】

子どもによく見られる頬杖をつくクセですが、日ごろから頬杖をついてテレビを観る、頬杖をつきながら勉強をする、といった悪習慣を続けていると、成長期の歯やあごに左右のバランス差が生じてしまい、歯並びの乱れにつながってしまいます。

また、寝るときに左右どちらか決まった側だけを下にして寝る習慣があると、頬杖の場合と同様に歯やあごの左右のバランスが崩れてしまい、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。

【やわらかいものばかり食べる】

普段の食事でやわらかいものばかり食べていると、奥歯でかむことがおろそかになり前歯だけで食べ物をかむクセがついてきます。

すると、歯が前にでてきてしまい出っ歯になったり、かむ回数が少ないことで舌の筋肉がおとろえて舌の位置が下がり、受け口になるリスクが高くなります。

また、子どものころからやわらかいものばかりを選り好みして食べているとあごの骨が十分に発達しないため、歯が生えるスペースが狭くなってしまいます。

口内にスペースが不足すると定められた位置から歯が生えにくくなるため綺麗に歯が生えそろわなくなり、歯並びに悪影響をおよぼすことがあります。

上に挙げた「歯並びを引き起こす悪いクセ」は、あごの骨が成長段階にある子どものときには特に注意する必要があります。

もちろん、大人になったあとも人間の歯は口の中で少しづつ動いていますので、上記のクセにもし心当たりがある場合には、自分自身で意識してクセをやめるようにすることが大切です。

【歯周病】

歯周病にかかり歯を支えているあごの骨が歯周病菌によって溶かされてしまうと、歯がぐらぐらと不安定な状態になるほか、あごの骨や歯のバランスが全体的に崩れてしまい、歯並びの乱れにつながってしまいます。

【虫歯】

乳幼児である赤ちゃんや子どもは虫歯になっても痛みを周りの人にうまく伝えることができず、また、歯医者に行くのがイヤで虫歯を我慢してしまうことが多く、痛まない歯ばかりで食事をしたり、よくかまずに食事をとるようになります。

すると、あごの骨の発育がさまたげられてしまい、あごの位置関係やバランスが崩れ歯並びの乱れの原因になることがあります。

さらに、乳歯の時期に早い段階で虫歯によって歯を失ってしまうとあごの骨にかかる負担が均等でなくなるためバランスが崩れてしまい、のちに生えてくる永久歯の歯並びに悪影響をおよぼします。

虫歯については、生えてきたばかりの永久歯を虫歯によって早い段階で失ってしまったケースにおいても、成長途中にあるあごの骨の発育がさまたげられてしまうため、歯並びが乱れやすくなります。

なお、大人のケースについても、虫歯にかかって治療を受けず放置していると、上記でお伝えした子どもの例と同様、痛みの少ない側の歯ばかりで食事をするようになりあごの骨のバランスが崩れてしまうほか、虫歯で歯を失った状態を放置することで歯が抜けた部分に隣の歯が倒れてきたりかみ合わせの歯が伸びてくるなど、虫歯が原因で歯並びの乱れを引き起こすことがあります。

【不適切な歯科治療】

虫歯の治療で歯の詰め物やかぶせ物の調整が十分に行われていないケースでは、かみ合わせの部分に段差ができてしまい、歯並びの乱れを引き起こしてしまうことがあります。

【歯の治療を途中で放置】

虫歯の治療で歯を削ったときには、本歯となる詰め物やかぶせ物をするまでのあいだ、仮歯を詰めることで治療箇所を保護し、かみ合わせが乱れるのを防ぎます。

しかし、痛みがなくなったからと言って仮歯の状態で虫歯の治療を途中で放置してしまうと、プラスチック樹脂でできている仮歯がだんだん磨り減って歯にかかる負担のバランスが崩れてしまい、かみ合わせや歯並びを悪化させる原因になってしまいます。

【乳歯がなかなか抜けない】

乳歯は普通であれば歯の生え変わる6~12歳の時期に抜け、永久歯が生えてくるのですが、子どもによっては乳歯が残ったまま永久歯が生えてしまうことがあります。

乳歯が残った状態で永久歯が生える現象は多くの子どもに見受けられる症状のひとつであり、ほとんどの場合、乳歯はそのあと自然に抜け落ち、永久歯がまっすぐ生えてきます。

しかし、乳歯の歯の根が何らかの原因で溶けずにいつまでも乳歯が抜けない状態が続くと乳歯と永久歯が2本生えた状態になるため、歯並びの乱れが発生します。

このような場合には、よく経過を観察した上で自然に歯が抜けないようであれば抜歯を行い、乳歯を抜いて対処します。

通常は乳歯が抜ければ永久歯はきちんとまっすぐに生えくるのですが、乳歯が抜けたあとも永久歯が曲がって生えたままのケースではあごの骨の発育が十分ではなく永久歯が生えるスペースがなくなっているなど、歯列矯正を必要とする場合がありますので、もし、お子さまの乳歯がいつまでも抜けない状態が続くようであれば早めに歯科医院で診察を受けるようにしましょう。

【上唇小帯・舌小帯の異常】

上唇小帯(じょうしんしょうたい)とは上唇の裏側、中央部分から歯ぐきに向かって伸びている筋のことを指します。

上唇小帯はお母さんのお腹の中に赤ちゃんの命が宿ってから約3ヶ月後ごろに発生し、生後1年未満までは歯のそばに付着しています。

上唇小帯は上あごが発育することにともなって付着部位が歯のそばから唇の付け根、つまり上方向に向かって移動するのですが、子どもによっては、上唇小帯が上方向に移動せず筋が太いまま歯のそばに付着し続けてしまうことがあります。

上唇小帯が歯のそばで残っている状態が続くと、上唇小帯の筋が原因で前歯の中央部分が開いてしまう正中離開(せいちゅうりかい)などのすきっ歯が発生する可能性が高くなります。

また、同様に舌の裏側と下あごの歯ぐきの部分をつないでいる舌小帯(ぜっしょうたい)がのどの奥の方向に移動せず舌の先に残ってしまっていると、舌小帯の筋が原因で舌の動かし方に異常が発生し、かみ合わせの乱れが生じることがあります。

これら、上唇小帯や舌小帯の異常は子どもに多い症状のひとつであり、ほとんどのケースではそのまま放置しておけば自然と筋の位置も上方向や舌の奥へと移動するのですが、経過を観察しても筋の移動が確認できないときには、手術によって筋を切り、対処を行います。

この際、上唇小帯や舌小帯の異常が原因で歯並びやかみ合わせの乱れが発生しているときには、手術と合わせて矯正治療を行い歯並びをととのえてゆきます。

【親知らず】

奥歯のいちばん奥側に生えてくる第三大臼歯、いわゆる親知らずはまっすぐ生えてくれば歯並びに影響を与えることはあまりないのですが、歯ぐきの中で横向きに親知らずが生えてきたり、親知らずが生えるスペースが足りない場合には生えてきた親知らずが手前にある奥歯を押してしまい、歯並びが乱れることがあります。

このようなケースでは、親知らずを抜くことで歯並びが悪化するのを食い止めることができます。

歯並びを改善する最新の矯正方法「クリアライナー」について

「クリアライナー」はマウスピースを使って行う矯正方法です

クリアライナーとは、透明で目立ちにくいマウスピースを使って歯並びを改善する矯正方法のひとつです。

従来の金属製のブラケットとワイヤーを用いて行うブラケット矯正は、器具が目立ってしまうほか、矯正器具を装着する際や治療期間中に患者様が少なからず痛みを感じてしまう、というデメリットがあります。

その点、透明で目立たないマウスピースを使うクリアライナーであれば、矯正治療中も人に知られず、ご自宅で就寝中などの時間を利用して歯並びを改善することが可能です。

クリアライナーは患者様がご自宅でご自身で矯正を行うことができるほか、治療中に感じる痛みもほとんどなく、見た目も透明で目立たないため、お仕事で人と接する機会が多い社会人の方や、「少しだけ歯並びを矯正したい」という方に適しています。

クリアライナー「10のメリット」

透明で目立たずしゃべりやすい

透明な素材でできているため、装着中に目立ちません。

ご自分で取り外し可能

食事中や歯磨きなど、いつでも患者様がご自身で取り外すことができます。

歯周病や虫歯になりにくい

従来のブラケット矯正は器具を歯に固定するため歯が磨きにくきなり歯周病や虫歯にかかるリスクが高くなります。

いつでも取り外し可能なクリアライナーであれば、常に口の中を清潔に保つことができ、歯周病や虫歯にかかるリスクを下げることができます。

歯並びの微調整をすることが可能

クリアライナーは治療の成果を確認しながら、そのときどきのステップごとにマウスピースを取り外し、交換を行います。

1つのステップが終わったのちに再度歯型を取って新しいマウスピースを作るクリアライナーであれば、治療期間中でも歯並びの微調整を行うことが可能です。

金属アレルギーを発症するおそれがない

ポリウレタンでできているクリアライナーは、従来の金属ブラケットを使用する矯正とは異なり、金属アレルギーを起こす心配がありません。

矯正中でもいつも通りの食事を楽しめる

クリアライナーは、毎日の食事中にいつでも取り外し可能。

矯正中でもいつも通りの食事をおいしく楽しむことができます。

口の中を傷つけない

従来の金属ブラケットを用いる矯正では器具が口の中を傷つけてしまうことがありますが、ポリウレタン製で金属をいっさい使用していないクリアライナーは、治療中に口の中を傷つけることがありません。

矯正器具を清潔に保つことができる

従来のブラケット矯正では矯正装置を歯に固定するため器具のお手入れがしにくく不衛生になりがちですが、取り外し可能なマウスピースを使用するクリアライナーであれば、毎日マウスピースを取り外してすみずみまでお手入れをすることができ、矯正器具を常に清潔な状態に保つことができます。

治療期間が比較的短く済む

最長で4年以上の治療期間がかかる裏側矯正に比べ、クリアライナーは部分矯正でおよそ3ヶ月~10ヶ月、上下のあご全体の矯正でもおよそ6ヶ月~2年程度と、比較的短い治療期間で矯正を行うことができます。

痛みをほとんど感じない

通常のブラケット矯正は歯を動かす力が強い上、金属製の矯正装置によって口の中が傷つき口内炎などの症状を発症してしまうなど、治療中に痛みを感じやすい、というデメリットがあります。

マウスピースを用いて矯正を行うクリアライナーは、過度の力をかけずにじっくりと歯を動かすため痛みをほとんど感じず、器具によって口の中を傷つけることもありません。

クリアライナーが向いている方

  1. 歯並びの乱れが比較的軽い方
  2. 前歯など一部分だけ、少しだけの矯正を行いたい方
  3. 以前、矯正をしてある程度歯並びはととのっている方
  4. 矯正をしていることを知られたくない、または矯正中に目立ちたくない方(受付業務・接客・営業職の方など)

通常のブラケット矯正について

上の項でご紹介した最新のマウスピース矯正のクリアライナーは患者様がご自身で行うことができ、矯正中も目立ちにくいなど、多くのメリットがあります。

しかし、マウスピース矯正は従来の金属製のブラケットとワイヤーを用いて行う表側矯正や裏側矯正と比べると歯を動かす力が弱いため、歯並びの乱れが大きい場合には歯を動かす力が強い通常のブラケット矯正で治療を行います。

歯並びのお悩みは早めに歯科医師に相談を

今回は、「歯並びの乱れの原因となる悪習慣」、そして、最新の矯正方法「クリアライナー」についてご紹介をさせていただきました。

私たちが日ごろ行っているクセには人それぞれ、さまざまな種類のクセがありますが、普段から無意識に行っているクセの中には歯並びの乱れを引き起こす悪い習慣も存在しています。

歯並びに影響をおよぼす悪習慣は子どもの時期についつい行ってしまうクセも多いため、あごの骨が成長段階にあるお子さまをお持ちのご両親は、日ごろからお子さまの様子を特に気をつけて観察するようにしてください。

その上でもし、子どものクセが治らない、歯並びが乱れてきた、などのお悩みがある場合には、早めに歯科医師に相談をすることをおすすめします。

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